日本には独自の「箸文化」があります。生まれてすぐの「お食い初め」以降、食事の際には必ず箸を使って人生を過ごし、そして葬儀では火葬にした骨を箸で拾い上げます。このように日本人は、見方によっては“箸に始まり箸に終わる民族”なのです。
今回は、“日本人と箸の関わり”についてご紹介しましょう。
■箸は神と人を橋渡しする道具
箸の歴史は古く、食具として日本に広めたのは聖徳太子という説もありますが、それ以前(2~3世紀)は神事で用いられていました。今でも「新嘗祭(にいなめさい)」で天皇陛下が神前に米や粥などをお供えになる際に、ピンセット形の「竹折箸」が使われています。
この竹折箸が日本最古の箸で、神事に用いられていたことから、箸は神様がお使いになる”神聖なもの“でした。昔は素材に竹が用いられていた為、お供え物をする際に「竹」が神様と「者」(人)をつなぐ役目を果たしたことから、「箸」という漢字が用いられたとも言われています。
つまり、箸は”神様と人間を結ぶ、はし(橋)渡しをする道具“なのです。
■日本の箸の素材は木が中心
日本に箸を伝えた中国では箸の素材は、金属、陶器、木など多様です。韓国では、金属製の箸が主流です。これは王朝時代、料理に毒が入っていないかを見極める為だったと言われています。
日本の場合、箸の素材は木が主流です。繊細な日本料理には、先が細く、軽くて手になじむ木が最適です。材質は、竹、檜、杉、南天、栗、黒檀(こくたん)、紫檀(したん)、楓、松など様々です。神事の際は、神道で清浄の色である「白」を用いることから柳や檜など「白木」が用いられます。
日本では「白木の箸」は格上なのです。
■箸の種類
- 塗り箸:主に木の箸に漆を塗ったもの。洗って何度も使えるため環境にも良く、自宅用としてよく使用されます。
- 柳箸(祝い箸):結納や結婚式などの慶事で用いられる箸で、お正月などにも使われます。角がなく折れにくいため、和やかに、元気に過ごしたいという願いが込められています。
- 割り箸:一度しか使わない割り箸は、清廉さを大切にするに日本人の感性に合っています。飲食店でも使われますし、自宅では来客用として使われ、種類も多く豊富に揃っています。ただし、もてなしの席にはふさわしくない割り箸もあるので覚えておきましょう。
【もてなしに向く割り箸】
- 天削げ:箸の頭の形が削がれているのが特徴です。箸先も口当たりが良いように加工されています。中級から高級のお弁当に使用されていることが多いようです。
- 利休:両側が細く、箸の中央が膨らんでいます。これを両口箸と言い、一方は神様が、もう一方は人が使う“神人共食”を意味します。最初から2本に分かれている箸もあり、懐石料理では主にこれを使用します。
【もてなしには不向きな割り箸】
- 丁六・小判:六寸の長さで、箸の頭が長方形で溝がありません。最も大衆的で安価な割り箸で、正式な会食などでお客様に出すのは失礼です。
- 元禄:箸の頭の角がきれいに削られ、割りやすいように切れ目に溝が入っています。お弁当から外食まで幅広く使用されています。
■家族でも箸を共有しない
日本では家族でも箸を共有せず、自分専用のお箸を使います。男性用、女性用、子供用と長さも重さも異なり、自分の手になじむお箸を使う事で、物を大切にする心も育まれます。子供の成長と共にお箸を買い変えていくのも、親にとっては嬉しい事の一つでしょう。
■箸置きを使う
箸置きは日本発祥の文化です。神様に供える際に箸を置く「箸台」が箸置きの原型と言われています。箸を神聖なものと考え、テーブルにじかに置かない配慮からなのでしょう。
季節を楽しむ日本料理に合わせて箸置きを選ぶのも楽しいですね。
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