マナー&プロトコール ミニ辞典

日本マナー・プロトコール協会が正しいマナー&プロトコールの知識をお伝えします。

お月見は「十五夜」だけ?

お月見と言えば「十五夜」と思う方が多いと思います。しかし、かつては「十五夜」だけでなく「十三夜」にも月を愛でて楽しんでいたようです。

十五夜」も「十三夜」も秋の収穫を祝う行事です。

収穫した穀物、お団子やススキを神様に供えて、収穫を感謝しました。

十五夜」は一年の中で一番きれいな満月が見られる日のこと。毎年、日にちが変わります。

ちなみに2019年は9月13日でした。「十三夜」の月は左側が少し欠けていますが「十五夜」である中秋の名月に次いで美しい月と言われています。2019年は10月11日です。

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十五夜」だけを楽しみ「十三夜」にお月見をしないのは「片見月(かたみづき)」と言われ、風情がないと思われていたようです。

中国で始まった「お月見」のならわしは奈良時代に伝わり、平安時代には宮中で華やかなお月見の行事が行われていたようです。宮中では今でもその伝統が継承されているようで、その模様が、日本マナー・プロトコール協会の顧問で、宮中の賢所で57年間にわたって祭祀に携わられた故 高谷朝子様のご著書『皇室の祭祀と生きて河出文庫)』に記されているので、少しご紹介しましょう。

                 

十五夜」は朝から上新粉でお団子を15個こしらえて、野菜・果物、15個のゆで卵と共に「三方」に盛り、ススキと共に東の空に昇るお月様にお供えします。

午後8時頃に、みんなで廊下に座ってお月様にお辞儀をして「今年も相変わりませず今月の満月にお団子十五個をはじめ種々の御品を取り揃えまして御三方にお盛りしてお供え申し上げ、此方でお月見をさせていただきまして、ありがとうございます。どうぞ今年も無事に御用をお勤めさせていただきますようによろしゅうお願い申し上げましてございます。また明年も相変わりませず此方にて十五夜さんをお迎えさせていただきますように、よろしゅう申し上げましてございます。」と伝えられてきた口上を述べます。

その後に、お供えした品々を「お福分け」して「お月見の宴」を楽しみます。

そして、「十五夜」から1か月が過ぎた「十三夜」の夜は十五夜の時と同様にお供え物を用意してお月見を楽しみます。ただしお団子は13個になります。

 

月を楽しむのは「十五夜」や「十三夜」だけではありません。十五夜の翌日に少し遅れてためらいながら出てくる「十六夜」の月、17日日は立って待っているうちに上がる「立待月」、18日になると座って待つ「居待月」、19日は寝て待つ「寝待月」、20日は更に遅れて出てくる「更待月」と折々の月を楽しみます。

月を愛でる風習を振り返っても日本人の細やかな情緒を感じます。

   

秋の夕暮れ、「十五夜」だけでなく様々なお月様を楽しんでみてはいかがでしょうか。